土曜日の9:00AM。
開店時間に合わせて床屋に行ったのだが、
既に4,5人が店の前に立ち、開店を待っている。
休日の早い時間に散髪を終え、午後にはすぐ別の用事に取り掛かりたい。
そう思う人は多いのだろう。
床屋という場所はいつも混むものである。
だけどその日の人の多さは、ちょっと普通ではなかった。
開店前から列ができるようなことはこれまでなかった。
自分は7番目であった。
席に座り自分のカットの順番を待っていたが、
やがてその混雑の正体に気づく。
「本日セールなので500円引きです」
自分よりも早く散髪を終えた客が、店員から説明を受け、割引価格で支払いをして店を出て行った。
どうやら今日は「セール」らしい。よく見ると外の壁に「セール」と書かれた新聞のチラシのようなものが何十枚も張られていた。
が、刹那、考えてしまう。
「床屋のセール」って何?
スーパーや衣類を扱った店や書店、ビデオ店など、期日を決めて商品を安くするのがセールであるが、床屋のようなサービスにセールというものはあまり聞いたことが無い。
客の視点から「今日セールだから散髪しよう」という発想はあまりない。
だって髪の毛はセールに合わせて伸びているわけじゃないから。
500円割り引きと聞いても、例えば先週散髪したばかりの人が「セールならもう一回散髪しとこうか」とは行かない。
床屋でセールをすることの目的や意味がわからなかった。
店の視点から推測してみると、
「普段は他の店で散髪している客を、こちらの店に引き込むきっかけ」にしたかったのかもしれない。
でもその床屋のサービスは、有り体に言えば「ふつう」であり、他の床屋に比べて圧倒的に優れたサービスがあるというものでもなかったので、このセールをきっかけに店を変えよう。という発想にはなりそうもない。
「最近、客足が減ってきたから、ここでセールをしてもう一度店に目を向けてもらいたい」というのもあったかもしれない。
でも、その床屋はいつも混雑していて客足が減ったとも見えない。
セールなんてしなくても、いつも店はパニックである。
それでもセールスるなら土日などでなく客足が少なさそうな平日にする方が効果が出るのではないか。とも思ってしまう。
「料金を安くしたら客がくるかの調査」というマーケティング的な目的があったのかもしれない。
結局、謎である。
その日の客が多かったのは確かで、セールは成功していたのかもしれない。
でも、個人的には、セールはなくていい。
床屋は空いている方がうれしい。
店員もパニックになるとやっぱりサービスは雑になるしね。□