鬼滅の刃 その1

 

鬼滅の刃 全23巻を読み終えた。

 

物語の面白さやキャラクターの魅力については、ご存知の通りなので個人的に感じたことをつらつらと書いてみたい。

 

まず最初に感じたのが、物語の展開の早さである。

全205話で完結する物語だけど、連載開始のときから「205話で終えてください」と編集者に物語を終えるまでの期限を切られてから始めたのではないか?と思うくらい「巻いている」。

世間では空前の大ヒットを飛ばしたのだから、週刊少年ジャンプのやり方ならば、12鬼月という敵がいれば、その一人の下にさらに四天王だとかが付いて、それらを撃破してからやっと一人を討伐位に、延ばしまくってくるのが普通である。

鬼滅隊の柱9人についても、物語の骨格に関係のないエピソードなどを交えながら一人一人丁寧に描いていくものだが、トップバッターの煉獄さんは、いきなり核心の戦いに突入して、読者の感情をつかんだと思うや否や命を絶たれる。

残る鬼滅隊の柱たちも無惨との最終決戦が、読者にとって初めての戦闘シーンの披露だったりする。

物語の冒頭で家族を鬼に殺され、妹を鬼にされた炭治郎が鬼滅隊になるまでの修行シーンの早さもあっという間だ。

だが、それに対して、戦闘の1つ1つは、とても長い。まだ倒せないのかと思うほどに、倒れず、技を出し、死闘の極みとして描かれる。そして鬼であっても人間であっても、かつての悲しみや葛藤で今があることを丁寧にページを割き描く。

最終決戦の後のエピソードにも多くのページを割いているので、不条理であった仲間たちの死も、未来も読者が納得できるまで丁寧に描き切っている。

 

要するに、かつてないほどに、メリハリがきいている。ということなのだろう。

 

それを週刊少年ジャンプで、しかも社会的な大ブームが起こる中で、やりきってしまったということが、少年漫画の歴史に新しい表現の形として焼き付けられたのではないか。□