もやテン2021 5.書籍部門

もやテン2021 書籍部門

1.「嫌われる勇気」(「幸せになる勇気」)古賀史健/岸見一郎 ダイアモンド社
2.「黒牢城」米澤穂信 角川書店
3.「13歳からのアート思考」末永幸歩 ダイアモンド社
4.「アフターデジタル」藤井保文/尾原和啓 日経BP
5.「十二人の手紙」井上やすし 中公文庫

次点
・「沈黙のパレード」東野圭吾 文藝春秋
・「真夏の方程式東野圭吾 文藝春秋 
・「聖女の救済」東野圭吾 文藝春秋
・「一人称単数」村上春樹 文藝春秋
・「ルビンの壺がわれた」宿野かほる 新潮社
・「はるか」宿野かほる 新潮社

 

「嫌われる勇気」は、対話式でアドラー心理学が学べるという書籍だが、先生と生徒の対話のはげしい論争が本編を彩る強烈なスパイスになっている。自分の課題と他人の課題を独立させて考えることや、不満を漏らす誰もが自ら今の生き方を選択していることなど、まるで映画「マトリックス」で赤の薬を飲んだかのような衝撃があった。
もやもやしている気持ちがすかっと晴れ渡る驚きがあった。
「黒牢城」は、ミステリとしての完成度も高いが、たった一言の発言のミスで城がやすやすと落ちてしまうというような、戦国時代に生きる人々の日々の緊張感が本編中に充満していて、怖いと感じるほども臨場感があった。
「13歳からのアート思考」は、アート思考を学んでいくことの意義など、これからの子供たちの教育の一つの指針が書かれているが、ふだん美術にふれている自分ですら、モネの睡蓮をみて「カエルがいる」という見方ができていないという、眼から鱗が落ちるような気持にさせてくれる名著だった。
「アフターデジタル」は、DXが到来するこれからを少し見晴らしの良いものにしてくれる名著であった。
「十二人の手紙」は桃の話が強烈で、今も焼き付いている。ある意味、下手なホラーよりもよっぽど怖くてインパクトのある話だった。

次点にあげた村上春樹の「一人称単数」は、特に「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」がよかった。チャーリー・パーカーという人を知らない自分ですら、まるで音が聞こえてくるかのようなリアルな表現がされていて、人に何かを伝えるときにはこれだけの表現が必要なんだということを思い知った。
ガリレオシリーズはたくさん読みました。どれも面白くて東野圭吾の質と量を兼ねるスタイルに敬服しました。□