串カツはガチャガチャに似ている。


ふと、串カツが食べたくなった。

 

その日、業務に一区切りついたときに、それまで張りつめていた緊張感のひもをゆるめたくなったのである。
おとなしく静かに自宅に帰る日々を、たまには少し壊してみたくなったのかもしれない。
自分へのご褒美が欲しかったのかもしれない。

串カツにはずっと憧れがある。
長居はしない。
たくさんはいらない。
数本のお気に入りの串カツを手に取りながら、きゅっとビールを飲む。それだけでインスタント、しあわせなのである。

 

颯爽と串カツ松葉へ。

とはいえ、実はこの店に入るのは初めてでシステムがよくわからない。


「おひとりさまですかー。こちらどうぞ」

 

オールスタンディング(立ち飲みと言え)のカウンターに仕事帰りのサラリーマンがずらりと並び、串カツを手にしながら、ワイワイと語り込んでいる。なんともしあわせな空間である。

 

「これ自由にとって食べていいんですか」

 

「はい。最後に串の数で精算します」

 

個々のテーブルの前にバットがあり、注文をしなくとも次々と揚げたての串カツが並べられていく。そこから好きなものを勝手に手に取って食べる。欲しいものがあれば直接注文することもできる。

精算は回転寿司に似た感じで、くしの長さや色で4種類程度の料金差がある。

 

串カツは、いろいろな形をしているが、一見では何が揚げられているのかがわからない。
何を食べたいというより、形が美味そう。で適当に選んで食べていく。

 

これは、、、なんだ。あ、豚肉か。

 

これは、、、あ、玉ねぎか。美味い。

 

ビールに合う。

1串は140円~200円程度。安い。

小さいのであっというまに食べ終わってしまう。

何が入っているかわからないところや、まるでおもちゃのようなところ、がつがつと食べてしまうとあっという間に結構な値段になるところなどが、いわば「大人のガチャガチャ」と言った感じがする。

 

ミシュランガイドにのるような味かといえば、もっと庶民的で気軽だ。

B級グルメというものなのかもしれない。

だけど、肩ひじ張らず、周りの目も気にせずに、サクっと行って、食べて、飲んで、帰れる気軽さは、ミシュランの店では味わえない。

ワカコ酒ではないが、ほんとうに「ぷしゅう」という開放感なのである。□