制作日記(第10回個展まで26日)

 

作品とは何か。

 

自分の中では、作品とは「見ていただく価値がある(と思っている)もの」。

とてもこんなものは人様に見せられない。と感じてしまうものは作品ではない。

その基準は、人によってまちまちだろう。

自分の中でも価値の境界線は動いている。

 

今回の個展では、自分の中の価値の水準が異常というくらい引き上げられたような気がする。

過去の個展では、個展に向け作品を始めた初期にできた作品を、個展準備の終盤にできた作品と見比べたとき、はっきりと見劣りしているということが多々あっても、その結果会場全体のバランスがちぐはぐになってしまったとしても、やむなし。と、そのギャップに手を入れることもせず本番に向かっていたように思う。

 

だが、今回はそれを極力ゼロにしたいと思った。思ってしまった。

そのせいで、例年30日を切る頃には完成しているはずの作品が「ほとんど全部描きなおし」となり、火の車状態になっている。

 

現代は忙しい時代だ。

個々の人たちの時間はますます貴重になり、そのうちの一部の時間を割いてもらうことがとても難しくなっていると思う。

そんな状況の中でも、貴重な時間を割いて、はるばる会場まで作品を見に来てくれた人に、一人でも多くの人に、価値があった。楽しかった。来てよかった。と思ってもらえるように、全力でもてなしの準備をしたい。恩返しをしたい。

 

結果、なんだやっぱり損した。と思われてしまったとしても、「これが今できる全力でしたすみません」と潔く謝罪できるように真摯に制作に向かいたい。□