ごめんなさい、刺さらなかったです。
いいところだけをかいつまんで、ネガを一切書かずに感想を書くことも考えたけど、もう8割が「つまらなかった」という感想だったので、2割のいいところを書くということよりも、自分のために正直に8割のつまらなかった。を書くことにしました。
「開幕3分で笑いが沸点に達して、そのままラストまで煮えたぎっている」
まず三谷幸喜氏がチラシにそんなことを書いているから、期待値を「鎌倉殿」と同じくらいの今の水準に引き上げて観てしまったんだけど、本当にそうなの?と思わざるを得なかった。
自分は開演後、3分経ってもクスリとも笑うところがなくて、どこで笑うの?と感じたまま、第一幕が終わってしまった。
で、そのまま第二幕に入って、時折いきおいのある笑いも差し込まれた部分もあったけど、なんだか強引な印象もあり「沸点」というには全然足りなくて、そのままラストまで行っちゃった感じでした。
三谷幸喜氏の他のシチュエーションコメディの沸点はこれほど高くない。
これまで観てきた三谷氏の舞台では「巌流島」や「君となら」「バイマイセルフ」「マトリョーシカ」、映画では「ラジオの時間」「みんなの家」「すてきな金縛り」「マジックアワー」など、ずっと三谷幸喜作品を観てきた自分から見たら、本作は沸点がとても高いというか、沸点に達するものではなかったという印象です。
2022年現在の成熟した三谷作品と30年ほど前の三谷作品ではすごい進化のギャップがあって、今の肥えた目で観るには、もの足りない印象が強かった。
そもそも「舞台裏を描く芝居」という点がわかりづらかったと思う。
「芝居の舞台裏」は、芝居を観る側の自分には考えたこともない知らない世界で、それを理解する状況説明があまりないまま、
この人は誰?
監督って何者?
芝居には誰が出るの?
と思っているうちに、どんどんキャラクターが出てきて、どんどん物語が進んでしまって、置いてけぼりにされていた。状況理解に引きずられるような状態になってしまい、とても落ち着いて笑ってはいられなかった。
ぐでんぐでんに酔っぱらったマクベスが本番の舞台に出て行っちゃって、それを舞台裏のスタッフたちがなんとか影から支えてつじつまを合わせる。という設定はよかったけど、なにがおこっているかがうまく伝わって来ず、直接描かれない本舞台上で起こっている「危機」がどうも「危機」に感じられなかった。
なので舞台裏の人が即興で練り上げる「回避策」もなんだか強引で、「どうなっちゃうんだろう」と興味を感じる前に「そんなことやらなくてもいいんじゃない」としか見えなかったのです。
過去の作品を再演するのなら、携帯をスマホに書きなおすというだけではなくて、30年分に積み上げてきた経験や煮詰め方で、骨格から見直してリブートするくらいしてもよかったのではないかと思うのです。
「笑いの大学」も今、見たらどうだろうか。
もしかしたら「令和・笑いの大学」という新作として初公演することをしてもいいかもしれない。□