「名探偵のいけにえ」 白井智之著 新潮社
このミステリーがすごい2023年版で国内2位。
絶賛する人が多く、装丁もかっこいいので、
すぐに購入して、読んだのだが、
期待値をすごく高く読んでしまったためか、
それほど強く刺さらなかった。
ミステリーとしてはすごいと思うが、
一見ユーモアミステリーのような文体でありながら、
描いている世界が殺伐としていて、ハレーションを
起こしているように感じてしまった。(胃もたれ)
いろいろミステリーを読んできたが、
世界設定とか、登場人物たちのキャラクター、
文章の読みやすさ等が、
自分にとってはとても重要な部分で、
そこがずれていたら、
トリックがどれだけすごくても刺さらない、
ということに気づき始めた。
例えばアニメ好きでも、
(以下、自分のためのネタバレのメモなので注意)
・探偵である主人公・大塒(おおとや)の悪友・乃木や、相棒りり子のキャラクターにどことなくユーモラスな印象があり愛着がわくのだが、彼らが容赦なく死ぬ。
・アットホームなキャラクターが死んでいくところには、三谷幸喜氏の「鎌倉殿の十三人」に似たアプローチを感じたが、鎌倉殿はそれが史実であるということからだろうか、コメディとその容赦のない殺伐とした事件が目を離せない魅力になっていたのだけど、本作ではそのような受け止め方ができなかった。
・主人公が、奇跡を生み出す宗教家に、ジムジョーデンを犯人とする奇跡ありきの解法と、レイ・モートン校長(W)を犯人とする奇跡なしの解法の2つを、逃げられない選択肢としてつきつけて、教祖と信者全員を服毒自殺させるように話を進めていく。
・すぐれた相棒りり子が死ぬということには、それだけすごい事件だったという事実が必要であり、そのために、信者全員をいけにえにしたという大塒の動機に、なるほど!というよりも、不愉快な狂気のようなものを感じてしまって、素直にすごいと言えないような後味。
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