今日の一冊

 

「星降り山荘の殺人」 倉知淳著 講談社文庫

 



オーソドックスなミステリー。安心して読める。

雪の山荘に閉じ込められたクローズドミステリー。

節の冒頭に作者からのヒントが出ている。これで解けるでしょう。

と思いきや、完全にひっかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下自分へのメモ。注意!全てのネタバレを記載します)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・各節にヒントがあげられているのが斬新。
 だけど、そのヒントに寄りかかるということで、だまされてしまうという仕組み。
 P24「探偵役が登場する」とあり、
 探偵役は星園詩郎と誰もが思うが、実は早沢麻子が探偵役である。
 そして犯人は、星園詩郎。という大どんでん返し。
 ここが本書の最大のギミック。

・さびれた山奥のリゾートを再生したいという岩岸豪造の要望により、スターウォッチャー星園とワトソンの杉下和夫、UFO研究科嵯峨島、人気作家草吹あかねとその秘書早沢麻子とその仲間たちが集まるが、岩岸が殴られ絞殺された。やがて秘書の財野も同様の方法で殺害される。

・ポワロのように犯人特定の説明を始める星園だが、説明がくどい。
 で、犯人をワトソンの和夫に押し付けようとした当たりで、おまえこそが犯人だとヒロイン兼探偵の麻子が星園を犯人指名するのだが、突然の展開に脳震盪を起こしているときに、論法もなんだか飛躍しているような感じで、ほとんど無抵抗に星園が犯行を認めてしまうのだが、それでいいの?と思ってしまう。

・読み手が、あれやこれやといれる突込みに対応しなくてはいけないのはわかるが、星園の説明は分かりづらい。そして麻子の説明は飛躍しているので、犯行の過程や動機のあたりは、アガサクリスティのようにはすっきりとは読めなかった。

 例えば、岩岸が殺されたときの声が実はラジオだったのは、なんでそんなことがわかるの?とちょっと超人めいていて飛んでいるような感じを受けた。

雪にできたミステリーサークルが、壁の煤を取り除くための水として使われたということも、そんなことするか?というような違和感があった。

・犯人やラストの驚き度はとても高かったので、だまされたい自分にはよかったと思う。