無冠の帝王。という言葉がある。
自分は無冠だ。
先日昼食を作ろうとキッチンに立ったとき、刹那脳裏に無冠で終わる人生の終着点が見えた気がして、ぞっとした。
漫画、イラストレーション、そして絵画、ときおりグラフィックデザイン、文筆なんて好きなものをつまみ食いしながら生きてきたが、どの世界もかじった程度であり、誇れるものは何も生み出せていない。
それぞれ都合が悪くなると逃げるように別のフィールドに移り続け、そして今がある。
絵画という表現手段にしぼったものの、いつも世界はぶれていて一向に世界観が定まらない。
文章も書くのは好きだが、何か成果に結びつく気配は、ない。
そこに来て、今度はグラフィックデザインをやりたいとか思っている。
いつも新しいことに手を出すとき、このフィールドならば!と新しい世界に胸を躍らせる自分がいながらも、おそらくすぐに「才能」という名の壁にぶちあたる予感がする。
それは予感ではなく、概ね現実であることもうすうす気づき始めている。
すぐにまた「ここでもない」ということに気づいて逃走.....という未来が見えてしまう。
それでも、まだどこかに自分が最も大きなパフォーマンスを出せる分野があるのではないかと、期待をしてしまう。
それがまた自分という人間をぶらし、無冠というステータスをさらに色濃くする。
キッチンでそんなこれまでのことが一斉に脳裏に押し寄せ、人生の逆転ホームランを打つにももう手遅れなのかと、そういう恐怖がどすっと降りてきたのだ。
もらってばっかりで何も返せていない。
もう横ではなく縦へ進んでいかないと。犬死にだ。□