制作日記 二紀2024受賞者展 1

 

3月に銀座アートスペースにて開催される「二紀会2024年受賞者展」に出品する。

 

そこに向け、現在S20号を描いている。

 

が、どうも火がつかない。

言い換えれば、楽しくない。

じわじわと迫る〆切に脂汗を出しながら、

なんとかしなくては。という義務感が、

楽しさを覆い尽くしていて、息が詰まりそうだ。

 

業務を終え、家事を終え、もう休みたい。という気持ちに鞭をうつ。

だが、その疲労困憊した状態で、暗礁に乗り上げてどうにも身動きが出来なくなってしまった作品を、なんとか突破口をひねり出し、その状態から脱出させ、「楽しい」という状態に持っていくだけの精神力が湧いてこない。

 

描くという行為は、

釣りと同じようなもので、

あー今日はボウズだったな。という感覚が多々ある。

絵を長くやっていると、むしろ、そういう日が続く方が普通であることが経験でわかっていて、何日か気持ちがのらない日が続いたり、無理に描いてむしろ絵画悪くなっちゃったりする日が続いても、「明日こそリベンジ!」と気持ちを立て直して、ゆらぐこともほぼない強い体幹ができている。

 

だけど、昨今の育児をしながら描くという状況においては、描く時間を確保するのがとても難しく、そうも言っていられない。

今日この機会を逃したら、次回いつ描く時間が確保できるか。いつ集中できるか。いつうまくいくか。がわからないことが、とても重い。

今手に入れたこの機会に、なんのミスもなく、一発で理想通り完成することを望むようになる。

だが、そんな優れた制作の精度は自分にはない。

また、そんなスキルは作れるものでもない。

それでもなんとかこの一撃で飛躍的に作品を完成させようと、悪あがきをする。

そして今日も失敗する。昨日も、一昨日も失敗している。

 

そんなことが一週間も続くと、昼間にふと、夜に描き出す自分の姿に吐き気を感じたりする。

もうアトリエに入りたくねえー、酒飲んで寝てえー。と思う。

逃げ出したい。

だけどここで立ち止まっちゃうと、結局前に進んでいないから、毎日「どうしよう」の憂鬱な悩みに引きずられ続け、ストレスが居座り続けて心を削っていく。

ずっとトンネルの中からも出られず、かえって窒息をしてしまうことになるので、結局、死力を尽くしてでも、反対側に抜けるまではなんとか、穴を掘り続けて向こう側に出られるよう、前進していかないといけない。

この期間がとてもしんどい。

 

楽しい、というフェーズは、なんらかの突破口や手ごたえを見つけて、ゴールが見えたところから、ゴールにたどり着く期間で、それは全体の中のほんのちょっとの間でしかない。

でも、そのフェーズの「楽しさ」を体が知っているから、麻薬のようにそれを求めて、それまでの苦しみに耐えているのだ。

 

改めて、文字に起こしてみると、自分はばかなんじゃないかと思うのだが、やめちゃったら、もっと苦しいことが待っていると知っているから、もう後にも引けず、前に進むしかないんだな。

 

なんの見返りもないのに。

やっぱり自分はばかなんじゃないか。改めてそう確信する。□